◇イスラエルの兵器はどこから来るのか
「イスラエルの兵器がトンネル経由で運び込まれるとしたら」
キャシー・ケリー
エレクトロニック・インティファーダ
2009年2月12日
ガザからシカゴに戻って以来、私はこんな質問を受けつづけている。ガザ
の人たちはどうやってこの事態に対処しているの? 完全に包囲された状況
であれだけの爆撃を受けて、精神的にもひどいトラウマを抱えているはずな
のに、どうして自分を保っていられるの? 私自身、どうしてだろうと思う。
ガザであれイスラエルの側であれ、愛する者を失った人たちが同じ痛みと
つらさを味わっていることはわかっている。ボーダーのどちら側でも、恐ろ
しい悪夢の間じゅう、大人が一番心配しているのは子供たちのことだろう。
大人は自分のパニックは抑えつけ、表では泣かず、見かけだけでも普通の生活
を取り戻そうと必死に頑張っている。先行きの見えないつらい試練の日々を、
子供たちが何とか乗り切っていってくれるようにと願いながら。
子供たちのほうも、お父さんお母さんの手助けをしたいと思っている。1月18日
の朝、少なくとも前日までの激しい爆撃は一応おさまったように思えるラファ
で、私は、幼い子供たちが木切れを集め、防水シートに積み上げ、家に引きずっ
ていくのを見ていた。みな、家の修復をする親たちの手伝いをするのがとても
誇らしげな様子だった。以前、イラクでも、これとまったく同じ光景を見た。
2003年、アメリカの「衝撃と畏怖」作戦ののち、イラクの子供たちは、爆撃され
た軍事基地に間に合わせの家を建てる親たちのために、せっせと煉瓦を集めてい
た。子供たちのこの回復力は、とりあえずはうれしいことだ。
爆撃を生き延びた子供たちは、熱を込めて再建に取り組む。幼い子供は、自分の
命がどれほどの危険にさらされていたのかを理解していない。よその大人たちが
再び爆弾を浴びせる準備をしていることもわかっていない。
私の横には、同じように、木切れ集めに一生懸命の子供たちを見つめている大人
の男性がいた。その人が「ほら、見てごらん」と上空に目を向けた。イスラエル
の無人哨戒機が頭上を飛んでいった。「私が木切れを拾って運んでいたら、ただ
の木切れを武器だと思われる可能性がある。そうなったら、私は標的になってし
まう。だから、小さな子たちが木切れを集めているんだよ」
ハイテク無人機が情報を集め、さらに爆撃を加えるべきターゲットを決めるため
の「諜報活動」に勤しんでいる一方で、こちらでは、まだよちよち歩きと言って
いい子供たちが木切れを集めている。爆撃で家はどこも半壊状態。夜の寒さを
しのぐのと料理をするために木切れは欠かせない。イスラエルのガザ封鎖のおか
げで、燃料はいっさいない。
ラファのボーダー検問所は今、再び閉鎖されている。食糧、燃料、水、建築資材、
そのほか日々の暮らしに必要な物資を求める人たちは、そうした物品をエジプト
側から運んでくるために、以前にも増して、大きなダメージを受けたトンネル網
に頼らざるをえなくなっていくだろう。イスラエル政府はこう言っている。トン
ネルはハマースが武器を運び込むために使われる、武器は罪のない一般市民も殺す
ことができる、だから、イスラエル軍としては、これまでもずっとやってきたよう
に、ボーダー沿いの一帯を爆撃する以外に方法はない、と。
アメリカの兵器メーカーがイスラエルに兵器を運び込むためにトンネルを使わな
ければならないとしたら、どうだろう。アメリカは、とてつもないトンネルを掘ら
なければならないことになる。ボーイング、レイセオン、ロッキード・マーティン、
キャタピラーがイスラエルに提供している兵器はどれもとてつもなく大きいのだか
ら。世界の七不思議に新たに加わるのは必至の超巨大サイズのトンネル、トンネル
のグランド・キャニオン、時を超えて輝きわたるエンジニアリングの偉業。
このトンネルを通ってくる物のことを考えてみよう。
ボーイング社の製品をイスラエルに運び込む巨大地下トンネルは、飛行機の両翼
が引っかからずに通れるだけの広さと、ミサイルを積んだトラックが問題なく
通過できる頑強さを兼ね備えていなければならない。インディメディアUKの
コーポレート・ウォッチの記事(2009年1月29日)によると、最新の時点で
ボーイング社からイスラエルに送られた製品には以下が含まれている。
* AH-64Dアパッチ・ロングボウ戦闘ヘリコプター:18機
* ボーイングF-15イーグル戦闘機:63機
* ボーイングF-16戦闘機:102機
* ボーイングAH-64アパッチ戦闘へリコプター:42機
* F-16ピース・マーブル2およびピース・マーブル3
* ボーイング777:4機
* アロー2迎撃ミサイル
* イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)社開発のアロー・
ミサイルおよびボーイングAGM-114 Dロングボウ・ヘルファイア・ミサイル
昨年(2008年)9月に、合衆国政府は、ボーイングGBU-9小径爆弾1000個をイスラ
エルに売ることを承認している。この価格は7700万ドルに及ぶ。
今回、この爆弾の多くがガザに落とされたというわけだ。イスラエルが新たな爆弾
をボーイング社から購入するとなれば、ボーイング社の株主たちは、さらなる
売り上げ、さらなる儲けを期待することができる。たぶん、今後予定されている
殺戮の在庫もたっぷりあるだろう。トンネルをきちんと維持管理することは、
たいへん重要なものとなる。
年間収入が約200億ドルという、アメリカ最大の兵器メーカーのひとつ、レイセオン
社も、イスラエルに兵器を供給している主要企業だ。昨年(2008年)9月、アメリカ
国防安全保障協力局(US Defence Security Cooperation Agency)は、イスラエル
のパトリオット・ミサイル・システムをアップグレードするためのレイセオン社製
キットを、1億6400万ドルで売ることを承認した。レイセオン社もまた、バンカー・
バスター爆弾、トマホークおよびパトリオット・ミサイルをイスラエルに運び込む
ために、この巨大地下トンネルを使うことになる。
ロッキード・マーティン社は歳入からすると世界最大の防衛関連受注企業で、2008年
の売り上げは420億7000万ドルと報告されている。ロッキード・マーティン社の製品
には、今回のガザ攻撃で使用されたヘルファイア精密誘導ミサイル・システムが含
まれている。イスラエルはF-16ジェット戦闘機を350機保有しているが、この一部は
ロッキード・マーティン社から購入したものだ。これらが世界最大のトンネルを通っ
て運ばれてくることを考えてみよう。
キャタピラー社もまた、こうしたトンネルの建造にひと役買うことになるだろう。
資産総額が300億ドルを超える、この世界最大の建設(および破壊)機械メーカーは、
建造物が密集する地域への侵攻の際に使うための特別仕様D9軍用ブルドーザーの製造
でイスラエルと独占契約を結んでいる。合衆国政府はキャタピラー社のこの特注ブル
ドーザーを買い上げ、年次ごとの対外軍事援助パッケージの一部としてイスラエル軍
に送っている。こうした販売はアメリカ武器輸出管理法(US Arms Export Control Act)
の統括下にあり、この法律では、アメリカの軍事援助物資は「国内の治安」のためと
「合法的な自衛」目的のみに使うこととされていて、一般人に対して使うことは禁じら
れている。
イスラエルは、入植地用のスペースを作るために、これらのD9軍用ブルドーザーで
パレスチナの一般市民の家を次々に破壊してきた。住んでいる人たちが家の中にいる
まま押しつぶすこともしょっちゅうだ。2003年に、パレスチナ人の医師の家が押しつ
ぶされるのを防ごうと家の前に立っていたアメリカ人の平和活動家レイチェル・コリー
を轢き殺したのも、このキャタピラー社製D9軍用ブルドーザーだった。
現実には、アメリカ製の兵器をイスラエルに運び込むトンネルは存在しない。しかし、
アメリカの兵器移送の実態、アメリカがイスラエルの戦争犯罪の共犯者であることは、
多くのアメリカ市民の目にはまったく見えないものとなっている。
イスラエルの兵器の提供源として、アメリカはトップの位置にある。もう30年にわたっ
て、イスラエルはアメリカの対外支援の最大の被供与者であり、 1985年以降、イスラ
エルは毎年およそ30億ドルの軍事・経済援助金をアメリカから受け取っている。
("US and Israel UP in Arms"、Frida Berrigan, Fpreign Policy in Focus,
17 January 2009)
多くのアメリカ人には、この事実が見えていない。この大量の兵器輸出、そしてそれが、
私たちにとって、ガザとイスラエルの子供たちにとって、世界中の子供たちにとって何
を意味しているのかということも、アメリカ人のほとんどがわかっていない。
そして、当然、ガザの人たちは、私たちにこう問う権利がある。そんな事態にどう対処
しているの? どうしてそんなことをそのまま続けていられるの? あなたたちの税金
が私たちを殺しているのに、のんびりと座って事態を眺めていられるのはどうして?
ライフルや銃弾や手作りのロケット弾をガザに送り込むのが間違っているとしたら、
それなら、私たちに向けて使われている大量の武器弾薬、この3週間の間に400人以上の
パレスチナの子供を殺し、何千人という子供たちに手足を失うような怪我をさせた兵器
をイスラエルに送るのも、同じように間違っているんじゃないの?
でも、ガザの晴れ渡った空のもと、地下に狭いトンネルが走っているラファの瓦礫の前
に立って、空爆のターゲットを伝えるべく飛び交っている機械じかけのスパイの群の音
を耳にしている私──アメリカ人である私に、こうした厳しい問いを投げかける人は
ひとりもいなかった。一緒にいた男性は小さな掘っ建て小屋を指差した。そこではゴミ
用のブリキ缶で火が焚かれていた。さあ、中に入って、温まって、お茶を飲んでと、
みんなが私に言ってくれた。
キャシー・ケリー:Voices for Creative Nonviolence(www.vcnv.org)のコーディ
ネーター。昨年暮からのガザ攻撃の間、エジプトのラファのボーダー近くに滞在し、
多くのレポートを書いている。
原文:If Israel's weapons came through a tunnel
Kathy Kelly writing from Chicago, the United States, Live from Palestine,
12 February 2009
http://electronicintifada.net/v2/article10303.shtml
翻訳:山田和子
*この文章は以下に掲載されている。参考リンクはそちらから。
http://palestine-heiwa.org/news/200902170152.htm
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